「平泳ぎのキックを頑張っているのに、なかなかタイムが縮まらない」
小学生スイマーや保護者の方から、よく聞く悩みです。
平泳ぎは、ただ強くキックすれば速くなる泳ぎではありません。
大切なのは「足でどれだけ水を後ろへ押せるか」と「キックの後にどれだけ速く伸びられるか」です。
特に大会であと0.1秒を縮めたい場合、キックそのものの強さだけではなく、
- 足を引く速さ
- 足首・足の向き
- 水を押す方向
- キック後の伸び
- キックと体のタイミング
を細かく見直す必要があります。
今回は、平泳ぎの「足だけ」に絞って、基本の練習から、0.1秒を縮めるための考え方、競技レベルでも重視される練習方法まで紹介します。
平泳ぎは「強いキック」だけでは速くならない
まず覚えておきたいのが、
「強く蹴る=速いキック」ではない
ということです。
平泳ぎでは、キックの推進力を効率よく前へつなげる必要があります。
競泳のルールでも、平泳ぎのキックでは推進部分で足を外側へ向けること、左右の脚を同時に動かすことなどが定められています。
つまり、単純に脚力だけで勝負するのではなく、
「正しい位置で水をつかみ、後ろへ押して、その後に抵抗を減らす」
ことが重要です。
平泳ぎの足だけ練習で最初に意識する3ポイント
① かかとをお尻に近づける
最初のポイントは、キックの準備です。
脚を後ろへ引くときに、
「膝を大きく開こう」
と考えるより、
「かかとをお尻に近づける」
と意識してみましょう。
ただし、膝を必要以上に大きく開くのはおすすめできません。
膝が横に広がりすぎると、前から受ける水の抵抗が大きくなります。
イメージは、
かかとを引く → 足の裏を外側へ向ける → 一気に後ろへ押す
です。
② 足の裏・内側で水を押す
平泳ぎのキックでは、足の裏や脚の内側で水をとらえます。
ここで重要なのが、
「足を回す」ではなく「水を後ろへ押す」
という意識です。
キック中に足が外へ逃げてしまうと、せっかく脚を動かしても推進力につながりません。
「足の裏で水をつかむ」
という感覚を持ってみましょう。
③ 蹴った後は「すぐ伸びる」
実は、0.1秒を縮めたい選手ほど、この部分を意識してほしいです。
キックした後に、
「まだ脚を動かしている」
状態になっていませんか?
キックは、
引く → 押す → 閉じる → 伸びる
までを一つの動作として考えます。
蹴った後に脚が開いたままだと、水の抵抗を受け続けます。
そこで、
「蹴ったら終わり」ではなく「蹴ったら伸びる」
と覚えましょう。
平泳ぎの足だけ練習①「壁キック」
最初におすすめしたいのが、壁を使ったキック練習です。
やり方
- 壁を両手で持つ
- 体を水平にする
- 両脚を伸ばす
- かかとをお尻へ引く
- 足首を外側へ向ける
- 足の裏で水を後ろへ押す
- 脚を閉じる
- そのまま伸びる
これを繰り返します。
意識するポイント
「たくさん蹴る」必要はありません。
最初は、
1回1回のキックを丁寧にする
ことを優先します。
特に、
「蹴った瞬間に前へ進む感覚があるか」
を確認してください。
平泳ぎの足だけ練習②「ストリームラインキック」
次は、壁を蹴ってから平泳ぎのキックだけで進みます。
これは非常におすすめの練習です。
USA Swimmingの競技者育成でも、ストリームライン姿勢やキック、ブレイクアウトなどを段階的に身につけることが重視されています。
やり方
壁を蹴って、
ストリームライン → キック → 閉じる → 伸びる
を繰り返します。
ここで重要なのは、
キックした直後に急いで次のキックをしないこと。
キックで進んだ距離を感じてから、次の動作へ移ります。
「蹴る回数」より「1回のキックで進む距離」
これを意識してください。
平泳ぎでは、近年のトップレベルでも「1ストロークでどれだけ進むか」「キック後のラインをどう使うか」が重要視されています。
World Aquaticsの記事でも、トップ選手の平泳ぎではキックによる推進力を活かし、ストロークを急がず距離を稼ぐ考え方が紹介されています。

平泳ぎで0.1秒縮めたいなら「キック後」を見る
ここが今回、一番伝えたいポイントです。
0.1秒縮めるために、
「もっと強く蹴ろう」
だけでは不十分です。
むしろ、
「キックした後に減速していないか?」
を確認してみてください。
例えば、
悪いパターン
キック
↓
脚が開いたまま
↓
すぐ次の動作
↓
水の抵抗が増える
良いパターン
キック
↓
脚を素早く閉じる
↓
体を一直線にする
↓
前へ伸びる
↓
次の動作
この違いは小さく見えても、25m、50m、100mと積み重なると大きな差になります。
ただし、「この練習をすれば必ず0.1秒縮まる」という保証はありません。
0.1秒はスタート、ターン、泳速、疲労、計測条件などでも変わるためです。
だからこそ、
0.1秒を「キックだけで作る」のではなく、「キックによるロスを減らして作る」
という考え方がおすすめです。

プロも重視する「キック後の伸び」
トップレベルの平泳ぎでは、単純な脚力だけではなく、ストローク全体のタイミングや距離を考えることが重要です。
World Aquaticsが紹介したザック・スタブルティクック選手の平泳ぎでも、ストローク数を抑えながら1ストロークの距離を活かす考え方が紹介されています。
これは小学生の選手にも参考になります。
もちろん、
「プロと同じ練習量をすれば速くなる」
という意味ではありません。
大切なのは、
トップ選手が何を意識しているのかを、自分のレベルに合わせて取り入れること
です。
実践!0.1秒を狙う「10mキック練習」
大会前にも取り入れやすい練習です。
メニュー
10m × 4本
1本目:ゆっくり正確に
2本目:キックを強く
3本目:キック後の伸びを意識
4本目:速さと伸びを両立
ここでタイムを測ります。
ただし、毎回全力で泳ぐ必要はありません。
むしろ、
「速く蹴る」より「速く進む」
ことを優先してください。
チェックするポイント
チェック項目 確認すること かかと お尻に近づいているか 膝 必要以上に開いていないか 足首 水を押せる向きになっているか 足の裏 水を後ろへ押せているか 脚 左右同時に動いているか キック後 脚を素早く閉じているか 姿勢 体が一直線になっているか 伸び キックの勢いを利用できているか
「速いキック」と「遅いキック」の違い
意外かもしれませんが、速い選手ほど、
ずっと脚を速く動かしているわけではありません。
むしろ、
必要なところで一気に動かし、終わったら抵抗を減らす
ことが重要です。
イメージすると、
「バタバタバタバタ」
ではなく、
「引く → パッ! → 閉じる → スーッ」
です。
この「パッ!」と「スーッ」のメリハリを意識してみましょう。
平泳ぎの足だけ練習でやってはいけないこと
① 膝を開きすぎる
「平泳ぎだから膝を大きく開く」
と考えてしまう選手がいます。
しかし、開きすぎると抵抗が増える可能性があります。
② 足首が伸びたまま蹴る
足首がうまく使えないと、水を押す面を作りにくくなります。
足首を外側へ向け、水をとらえる感覚を身につけましょう。
③ キックの後に脚が開いている
これは非常にもったいないポイントです。
「蹴ったら脚を閉じる」
ここまでをキックと考えます。
④ 速く蹴ることだけを考える
速い動作と速い泳ぎは同じではありません。
大切なのは、
「1回のキックでどれだけ前に進めたか」
です。
家でもできる平泳ぎキックの陸上練習
水中練習ができない日には、動作確認だけでもできます。
床に仰向けになり、
- 両脚を伸ばす
- かかとをお尻へ近づける
- 足首を外へ向ける
- 脚を円を描くように動かす
- 最後に両脚を閉じる
という動作をゆっくり確認します。
ただし、陸上でできる動作と水中で実際に水を押す感覚は同じではありません。
そのため、
陸上=フォーム確認
水中=水を押す感覚と推進力の確認
と使い分けるのがおすすめです。

0.1秒を縮めるなら「動画」を使おう
自分のキックを感覚だけで判断するのは難しいものです。
そこで、スマートフォンで横から動画を撮影してみましょう。
確認するのは次の5つです。
- かかとを引いたとき、膝が開きすぎていないか
- 足首が外側を向いているか
- キックで水を後ろへ押せているか
- キック後に脚が素早く閉じているか
- 脚を閉じた後、体が一直線になっているか
現在は競泳でも動画やバイオメカニクスを使った技術分析が行われています。World Aquaticsも、世界選手権での技術分析について、映像とデータを活用して改善点を具体化する重要性を紹介しています。
もちろん小学生の練習では、難しい分析をする必要はありません。
「キックの後、ちゃんと伸びている?」
これだけでも十分です。
まとめ|平泳ぎの0.1秒は「強く蹴る」だけではなく「無駄を減らす」
平泳ぎの足を速くするために大切なのは、
強いキックだけではありません。
ポイントをまとめると、
- かかとをお尻へ引く
- 膝を必要以上に開かない
- 足首を外側へ向ける
- 足の裏で水を後ろへ押す
- 左右同時にキックする
- キックしたら脚を素早く閉じる
- キック後はストリームラインを作る
- 1回のキックで進む距離を意識する
- 動画でフォームを確認する
そして、0.1秒を狙うなら、
「もっと強く蹴る」ではなく「キックで得たスピードを逃さない」
という視点を持ってみてください。
平泳ぎは、ほんの少しのフォームの違いがタイムに影響します。
だからこそ、練習では毎回全力で蹴るのではなく、
「今日は足首」
「今日はキック後の伸び」
「今日は膝の幅」
というように、1つのテーマに絞って練習することも効果的です。
あと0.1秒。
その差は、脚力だけではなく、キックの質と、その後の伸び方から生まれるかもしれません。





